::死者の書 折口信夫
奈良と大阪の県境辺り、二上山の麓に当麻寺というお寺があります。
私は隙あらば関西のナイス寺をネットで探すのが楽しみになっているのですが、当麻寺は今最も行ってみたいお寺なのです。
そんなわけで公式サイトを見たりなんだりしているうちに、この死者の書が二上山と当麻寺についての小説であることを知りました。
当麻寺は、ご本尊としてある曼荼羅をお祀りしているのですが、この曼荼羅の由緒が面白いんです。
天平の世に中将姫というやんごとなき方がいて、この姫さまが写経を1000巻終えた時、二上山に陽が沈む様子を眺めていると阿弥陀如来の姿が見えたそうです。
姫は阿弥陀如来にたいそう心打たれ、観音様に導かれて二上山の麓の当麻寺に行き出家したそうです。
そして自分が目にした阿弥陀如来+極楽浄土を曼荼羅に織り上げたものが、ご本尊として今も祀られているというわけですよ。
っていうのが公式サイトの受け売りなんですが、小説ではちょっと違います。
小説でも姫さまは1000巻の写経をしているのですが、950巻を越えたあたりの春分の日に、二上山の頂に沈む太陽の中に阿弥陀如来ではなく黄金に輝いた美しい男の人の姿を見るのです。
800巻辺りからやつれて元気がなくなっていた姫さまですが、この日を堺に俄然やる気を取り戻します。
それから半年後の秋分の日にも同じ姿を見て益々歓喜し、また半年後の春分の日にはいよいよ1000巻目を書き終えて落陽を待つのですが…なんと無情にもお天気が悪くて……
黄金の彼に会えなかった姫さまは、彼に近づきたい一心で、家出して二上山を目指すのです。
この黄金の美しい男性の正体は、二上山に埋葬された大津皇子なんです。
冷たい石室で長い眠りから覚めた大津皇子の魂と、彼に恋した中将姫と、あとは藤原の郎女中将姫が最近神隠しにあったらしいぜって噂してる大伴家持の3方向から話が進んでいく展開がすごい面白い!
短いお話だし、文語体で読みにくいし、でもインパクトは絶大で、私も中将姫のように二上山に突撃したい気分が盛り上がっております!二上山に沈む夕日が見たい!
現在 43/100冊
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